万葉に関する造詣

矢内原先生はこの翻訳を引受けて下さって半年足らずのうちに新書二巻分にあたるものを訳了されました。この努力がなかったら、岩波新書の先頭を『奉天三十年』で記念することもできなかったわけですが、それと同じくらい私たちが感謝したのは、斎藤茂吉先生…

長江中流の武漢での開発

中国軍の近代化は至上命令となった。軍事工業の近代化は必至となり、したがって民間工業の近代化は避けられなかった。これが中国の政治・経済・技術の現代化の起点であった。一九五三年に朝鮮戦争の休戦協定が実現した。しかし中国とアメリカとの戦争状態は…

日米防衛協力のためのガイドラインの国内関連法

野中は、はるか以前、小渕内閣発足直後から、自自連立を模索していたといわれる。たしかに自民党にとって事態は深刻であった。参議院で過半数割れが続く一方、九九年の通常国会では日米防衛協力のためのガイドライン関連で、周辺事態安全確保法案、中央省庁…

マトモなコミュニケーションが成り立つはずがない

口先でうまいことをいってなにもしないのと、いろいろするが厳しいことをいうのと、どちらがいいのかと、母親に聞いたことがある。敵もさるもの、こちらの意図を察して、このトシになると厳しい言葉は一切ききたくない、どうせしてもらえることは限られてい…

近い将来起こるべき消費者自身の欲求の変化

人間は「時代精神」の中で生き、ごく少数の限られた人だけが「時代」の壁を超えられるという。二一世紀の消費者行動を考える際には、これまでの歴史的な社会・経済の動きを大雑把に鳥瞰しておくことは重要である。消費行動の変化は人間が中心であるために、…

物質的「豊かさ」の限界

現代は、科学技術の「意味が見えにくくなってい」て、「とくに先進諸国ではもうあまり科学技術の成果に期待しない」時代だとは、それでは、いったいどういうことなのだろうか。おそらくそれは、まず第一に、学問がますます細分化・専門化して、ひとつの専門…

地球経済の諸要因

この石油ドルは主として、長期的には、アメリカ、イギリスの政府証券、対工業国投資、国際機関・発展途上国融資、短期的にはユーロ市場や上交国預金の形で運用された。OPEC諸国は、第四次中東戦争、イラン革命の政治的変動を利用して、生産国カルテルの…

「現在価値」の発見

さて、いま一つの方向は、いわゆるデリバティブによるヘッジの考え方である。つまり、リスクを構成している要因と同じように不規則に変動する金融商品が見つかれば、それを使ってリスクをヘッジすることができる。たとえばある銘柄の株式に投資するとして、…

対米協調最優先の日本外交

従って、今日の国際社会にとっての重要な問題は、いかにして大国、強国の国家的エゴイズムの自己主張を抑えるか、そしてそれによって秘密外交の温床をいかにして取り除くかという点にこそあると思われる。そしてこの問題を考える上で重要な地位を占めるのは…

構造不況業種の整理

この時期の景気回復は長くは続かなかった。従来型の財政・金融政策による景気刺激策がスタグフレーション(不況下での物価上昇)の激化を生み出すことによって、世界経済は早くも七八〜七九年にかけて変調をきたし、第二次オイル・ショック後の八〇年代初頭…

創造性や勇気ある秀才が激減

なぜ、日本人や日本社会は「人材を評価する」ということができないのだろうか。様々な理由が考えられるが、経験上、最も大きな理由として思うことは、日本人の「お上頼み意識」の強さである。誤解なきように言うが、これは日本人が役所や公務員を尊敬・信頼…

市場慣行・取引所会員資格の有無などの問題

株式売買手数料自由化の動きにしても、すでに七五年五月一日の米国のメーデー、八四年四月一日の豪州、八六年一〇月二四日の英国のビック・バンと実施が拡大され、株式市場の時価総額が世界一となった日本でも遠からず、この開放化はやむにやまれず導入され…

不安定で流動的な雇用

昨今の雇用情勢の特徴として、真っ先にあげられるのが「不安定さ」「流動性の高さ」である。かつての日本では正社員・終身雇用体㈱が維持されていたので、働く場所は非常に安定していた。「これから先も職場があるだろうか」と心配している人などまずいなか…

総会の権限が相対的に薄れてきた

一九五〇年十一月に採択された有名な「平和のための結集決議」は、安保理常任理事国の一致が得られない場合は、総会に問題を付託し、総会が開かれていない場合は理事国七力国(現在は九力国)の賛成による要請か、加盟国の過半数の要請で、緊急特別会期を開…

奇妙なほど頻繁に「天皇」や「皇室」が持ち出されるようになっている

最近日本の政治に、奇妙なほど頻繁に「天皇」や「皇室」が持ち出されるようになっている。警戒されねばならない動きである。新任首相が、「宮家に挨拶回り」する。あるいは解散・総選挙の時期について、与党幹部が「天皇欧州訪問中にはできない」と言ったり…

平成金融恐慌

長銀問題とはシンクロ(同時並行)する形で、円安の急進を中心とした「日本売り」が加速していた。九八年六月十二日の東京市場では株、債券、円のトリプル安に発展。円相場は七年ぶりに一ドル=百四十円半ばまで下落し、株価は日経平均が一万五〇〇〇円台を…

コンベア廃止

G・フリードマン流にいえば「仕事それ自体でないものへの重点の移行は疎外の一局面であるとみられるべきである」(G・フリードマン『細分化された労働』小関藤一郎訳、小島書店)ということにもなるだろうし、もうすこし根底的につきつめれば、「労賃は疎…

外部の専門家の能力を活用する

九八年度、検査官百六十五名でスタートした金融監督庁の検査態勢は、その後、増員されて、九九年度には二百四十九名となっている。財務局の人員を加えると、七百二十一名の態勢ということになる。金融監督庁は九九年度の概算要求で、検査官百十五名など合計…

制度全般についての思惑

現在のところ、スウェーデンでも専門家のあいだには社会保障制度の根本的な改革が必要だという危機感がみられるが、一般の人々のあいたでは、社会保障制度の改革が必要だ、という認識は得られていないようだ。これは自分個人の利益からすれば、当然ともいえ…

金融機関が組成した証券化商品の受け皿

十月三十日、メリルリンチは七十九億ドルの評価損計上を発表し、スタンーオニール最高経営責任者(CEO)が辞任した。翌月五日には、シティグループが簿価五百五十億ドルの住宅関連の金融資産が八十億−百十億ドルに減価する見込みであると発表。チャールズ…

八万人も集まる社交の場

これは果たして本当だといえるだろうか。気分転換のため、六月初めの好天に恵まれた週末、私はイングランドとウェールズの国境地帯を訪れた。その場所は、美しいワイ川が貫流している、ヘイーオンーワイ(Fy-On-Wye)という小さな町である。三十四年…

正社員はどういう基準でリストラされるか

職種の特定は難しい。おそらくホワイトカラー・ブルーカラー入り交じるということになるのではないだろうか。製造業が大打撃を受け転換を求められることを考えると、工場閉鎖や生産圧縮に伴ってブルーカラーが主なリストラ対象になると考えられるが、図を見…

現代の経済学

私が職業とする経済学は、「貧しさ」を研究し、その解決策を探ることを役割とするというのが、これまでの考え方であった。もちろん、いまも「貧しさ」はなくなってはいない。「南」の諸国では、いまなお多くの人びとが飢餓線上をさまよっているし、日本を含…

巡動量を急激に増やす

毎日の速歩で一〇キロの減量(男性・初診時六〇歳)Cさんは六〇歳時、肥満(一六〇センチ、七五キロ)、高血圧(血圧一四四/九五)、高脂血症(総コレステロールニ五二、中性脂肪四六五《以下同》、基準値五〇〜一五〇)、高尿酸血症、基準値男性(四・〇…

トクヴィルの場合

組織的比較例証法は、ただ単に研究者の気まぐれや、印象に基づいただけのいいかげんな方法ではない。その意味でこの方法は組織的なのである。しかし例証(illustration)という言葉が示すように、この方法のデータは、統計的方法のようにサンプルに…

大国間の軍備競争の問題

私たちは、たとえば今日において「公正」とは何か、「民主的」とはどういうことなのか、従来のものさしでは判断しにくい状況にぶつかっていますが、その答えは、国内の状況だけではなく、その先につながっている世界、とくに第三世界、第四世界の問題を考え…

軍縮交渉の成果

軍縮の問題は、兵器の問題ではない。問題は兵器そのものにではなく、兵器を開発生産し、それで武装している人間にある。たしかに、核兵器という「究極兵器」がつくられて以来、核兵器そのものが危険の根源であるようなイメージがいだかれやすくなったのには…

お得意さんというアダ名

ぽくがちんちくりんだからかな、貧乏くさく、金などないように見えたのかなあ、と私か言うと、コミちゃんは、それはとてもいいことなのだ、と言った。それは私が、女欲しがりの観光日本人に見えなかったからだ、とコミちゃんは言った。コミちゃんの言葉をそ…

セクシュアルハラスメントをどう考えますか

転勤問題ではこれまで、単身赴任家庭の大変さについて多く語られてきた。だが最近は、夫の任地についていった妻たちがどんな犠牲に耐えているか、などについても、裁判などを通してクローズアップされつつある。帝国臓器製薬裁判では九一年三月二七日の第二…

欲張ることは悪い虫である

昔はシュロークのように、よく勉強して、よく働いて、初めてたくさんのお金が手に入るという仕組みだったのが、間のステップを飛ばしてもお金が手に入るようになっているケースもある。教育のない人がお金を手にするから貪欲になるとも言える。ただ、インド…