巡動量を急激に増やす

毎日の速歩で一〇キロの減量(男性・初診時六〇歳)Cさんは六〇歳時、肥満(一六〇センチ、七五キロ)、高血圧(血圧一四四/九五)、高脂血症(総コレステロールニ五二、中性脂肪四六五《以下同》、基準値五〇〜一五〇)、高尿酸血症、基準値男性(四・〇〜七・〇、女性三・〇〜五・五)、境界型糖尿病と生活習慣病の全てか認められました。病院にはまめに通ってきて、栄養指導をうけたりしていましたが、体重は七一〜七八キロをいったりきたりという状態が五年ほど続き、一九九二年二月(六五歳)の体重は七五キロでした。

何がきっかけになったのかはっきりしないのですか、「仕事ばかりでなく健康にも気をつけなくては」という思いに駆り立てられ、「朝の通勤時に三〇分、夕方の帰宅時に九〇分の速歩を行う。仕事がない日には四万歩の速歩を行う」という決心をし、巡動量を急激に増やしました。四万歩の速歩には五時間以上かかります。半端な運動量ではありませんから、九三年一月七〇キロ、二月六七キロ、三月六三キロ、四月六一キロ、五月六〇キロと順調に体重が減り、一五キロの減量に成功しました。

同年九月にみらく会(三楽病院糖尿病友の会)主催で行った新藤兼人氏の講演「ボケ老人の孤独な散歩」を聞いてから運動療法にさらに拍車がかかったそうです。空腹時血糖九七、総コレステロール一九七、中性脂肪一八九、尿酸三・七と善明な減少が認められ、血圧もコー八/八六に低下しました。

食事はバランスに注意しながら結構食べていたようですから、思い切って運動量を増やせば生活習慣病を克服出来ることを証明した貴重な症例です。その後も体重が増えてくると二万上一万五千歩の速歩を行う日を増やし、六二上〈四キロを維持していましたが、九七年頃から運動量がやや落ちてきました。九九年一月上二月はインフルエンザが恐くて運動をしなかったため。体重は六八キロに増え、血糖、総コレステロール中性脂肪、尿酸の値が全て悪くなっていました二二月の受診時にデータが悪いことを告げると、「四月からまた始めますよ」と言っていましたが、四月一日から木当に二万〜二万五千歩の速歩を再開しました。最近は体調にあわせて運動量を調節しており、夏以降は六四上(五キロを維持しています)。