正社員はどういう基準でリストラされるか

職種の特定は難しい。おそらくホワイトカラー・ブルーカラー入り交じるということになるのではないだろうか。製造業が大打撃を受け転換を求められることを考えると、工場閉鎖や生産圧縮に伴ってブルーカラーが主なリストラ対象になると考えられるが、図を見るとわかるように、ブルーカラーは長期的には減っており、個別具体的に見ていくと、不足感さえ生じている。そのため、今回のような製造業が大打撃を受ける不況の場合でも、ブルーカラーに混じってホワイトカラーも相応の影響を受けると思われる。

これまで①リストラの手法、②現実に正社員リストラが行われる可能性、③実際に正社員リストラが起こった場合、どういう業種・企業・職種でリストラが実施されるのかを見てきたが、ここでは一般のホワイトカラー正社員を例にして、リストラが具体的にどのように行われるのかということを考えてみよう。「クビにする」ためのリストラとしては、その強度が強い順に①整理解雇、②ダウンサイジング、③早期希望退職の募集、④普通解雇の四つが考えられる。会社が倒産寸前でもない限り、整理解雇は要件が厳しいし、ダウンサイジングも選択されないだろう。

まとまった人数をリストラするのであれば早期希望退職者の募集という手段が選択されるのに対して、個々人を狙い打ちしながらとなると普通解雇という手段が選択されるだろう。早期希望退職の募集とは、退職金を優遇するなどしながら、早期退職する人を募集して人員削減していくという穏和なリストラ策である。早期退職募集をした時点で「会社は傾いている」という判断もあるため、正社員の中にも募集に応じる者が増える傾向にある。他方で、バブル経済崩壊後の長期不況期に問題となったが、早期退職勧奨に名を借りたイジメまがいの退職強要も出てくるだろう。

普通解雇は個々人を対象に行われるものである。先程述べたように、整理解雇であれ希望退職の募集であれ、一度に大量の人数をクビにするのは難しい。その一方で、個々人の日々の仕事を厳しく評価することで、「出来の悪い正社員」を一人また一人とクビにすることは難しくない。この両者のリストラ策ともポイントとなるのは「誰を対象にするのか」ということであるが、リストラ対象の絞り込みを巡って、企業内は大きく揺れ動き、見たくもない様々な人間ドラマが繰り広げられるのは言うまでもない。ここでは、判断基準が明確・合理的なものの順にリストラ対象の絞り込み過程を想像してみよう。

まず、最も明確で合理的な判断基準は「年齢」である。中高年のホワイトカラー正社員がリストラの標的になる。理由は簡単である。給料が生産性に見合っていなくて高いからである(少なくとも企業はそう思っている)。また、企業は90年代後半以降採用抑制してきたため、30歳代の中堅社員が手薄になっており、それを危惧しているところが多いことを考えても、中高年正社員がリストラ対象となることは不思議なことではない。年齢を基準にしたリストラが明確・合理的な基準だという見方に対しては反論もあるだろうが、若年者がこれだけ犠牲になっている現状や、様々な業界において中高年正社員のために人事が詰まっていることを考えると、あえて年齢を明確人口理的な基準だと見なすことが間違っているとは思えない。