市場慣行・取引所会員資格の有無などの問題

株式売買手数料自由化の動きにしても、すでに七五年五月一日の米国のメーデー、八四年四月一日の豪州、八六年一〇月二四日の英国のビック・バンと実施が拡大され、株式市場の時価総額が世界一となった日本でも遠からず、この開放化はやむにやまれず導入されるであろう。しかし、銀行と証券の兼営、すなわちユニバーサル・バンク制度をとっている欧州大陸系銀行では、まだこの手数料自由化にはふみきっていない。

欧州大陸内の株式市場規模などは実に世界的サイズ全体からみれば零細だし、国民の直接金融方式としての株式市場などは一部の富裕個人と機関投資家の「箱庭」であり、西独のように株式会社も上場会社も減少しかけているほどである。したがって、ナショナルな金融資本市場としてとくに改革を緊急とするほどではないのである。英国だけは別である。北海原油とシティで国の威信を保っている以上、ニューヨーク・東京と並ぶ三大マネー・センターであり続けるためには、旧態依然たる株式市場では手数料自由化のニューヨーク、活況を続ける東京にはるかに後塵を拝してしまうのである。

ここに英国の証券革命(ビッグ・バン)のやむにやまれぬ真の理由がある。しかし、この自由化は他市場へ伝播せざるをえない。もし、東京市場が現在のような十段階の一・二五パーセントから〇・一五パーセントまでの東京証券取引所「売買委託手数料確定主義」を固守するかぎりは、いずれ東京市場の取引はニューヨークかロンドンへ流れてゆくかもしれない。もちろん、ドルやポンド建ての代金決済を行なわねばならないとか、時差とか、市場慣行とか取引所会員資格の有無だとかの問題はあるであろうが、現実の事態はそこまで進みかけているのである。