奇妙なほど頻繁に「天皇」や「皇室」が持ち出されるようになっている

最近日本の政治に、奇妙なほど頻繁に「天皇」や「皇室」が持ち出されるようになっている。警戒されねばならない動きである。新任首相が、「宮家に挨拶回り」する。あるいは解散・総選挙の時期について、与党幹部が「天皇欧州訪問中にはできない」と言ったりする。党略本位の解散時期の選定に「天皇」を持ち出すなど、戦前なら「不敬」に当たろうが、現憲法下では憲政の道筋を著しく歪めるものと言わねばならない。

日の丸・君が代法制化も含めて、「天皇」「皇室」を前面に立て、またことさらに「国家」「国威」を強調しようとする傾向は、戦前の偏狭な国家主義を彷彿とさせる。「新国家主義」というべき潮流である。こうした動きのきわめつけは、九九年十一月十二日の「天皇陛下御在位十年記念式典」であった。東京の国立劇場で、小渕首相ら三権の長自治体関係者、各国駐日大使ら約千三百人が出席して行われたこの式典は、小渕首相の先導で両陛下が入場。

出席者全員による君が代の斉唱のあと、首相の祝辞、天皇のお言葉が続いた。最後は小渕首相が音頭を取って、出席者の万歳三唱で終わった。戦後の天皇在位の記念式典は、「在位五十年」「在位六十年」と、昭和天皇の過去に例のない長期にわたる在位を名目にして祝われたものであった。それが在位わずか十年で式典を行うことは、前例がない。