外部の専門家の能力を活用する

九八年度、検査官百六十五名でスタートした金融監督庁の検査態勢は、その後、増員されて、九九年度には二百四十九名となっている。財務局の人員を加えると、七百二十一名の態勢ということになる。金融監督庁は九九年度の概算要求で、検査官百十五名など合計二百五名の増員を要求していた。増員が実現していることは好ましいことであるが、それにしても、金融検査サイクルの短期化や検査内容の高度化などをふまえると、この増員数では焼け石に水の感はぬぐえない。前述したように、アメリカに比べると、検査官数は桁違いに少ないのである。

そうした実情を少しでも打開すべく、金融監督庁は非常勤職員の採用に踏み切っている。先に紹介したコッピュータニ○○○年問題対応要員四名に加え、統計学デリバティブなど先端技術、保険数理などの専門家延べ二十名を短期採用した。コンピュータニ○○○年問題対応の人材の平均在職期間は約七ヵ月半であり、デリバティブなどの専門家は約五ヵ月であるという。

外部の専門家の能力を活用することは、決して間違ってはいない方策といえる。しかし、まったく問題がないわけでもない。実際、一部の短期採用職員について、金融業界では不満が募っている。任期満了の後、検査官として把握した内部情報を携えたまま、外銀などに転職する傾向があるからである。そうした人材が検査で知りえた情報をビジネスに生かすこともあり得る。

アメリカでは、検査官が民間銀行に転職する場合について、厳しい条件を課している。検査官であったがゆえに有した他の銀行の内部情報を、その後のビジネスに生かすことを厳格に防ぐためである。罰則規定も定められている。それに対してわが国では、まだ、そうした対応は遅れがちといっていい。金融監督庁は今後も、外部の専門家を臨時雇用するのであれば、そうした面での対応を急ぐ必要がある。