クレジットデリバティブとは

逆に金利下落となったケースでは権利放棄をして、固定金利貸出から得られる金利をそのまま受け取ることができます。エクステンダブルスワップとキャンセラブルスワップ「エクステンダブルスワップ」は、当初設定したスワップ期間をさらに延長できる権利を取引当事者の一方が持つスワップです。たとえば、スワップを延長する権利をペイヤーが持っているケースでは、当初のスワップ期間終了時において市中金利スワップの固定金利を超える水準にある場合に、ペイヤーはエクステンダブルスワップの延長権を行使して、スワップ延長後は市中金利より低い固定金利を支払うメリットを享受できることとなります。

これに対して、スワップを延長する権利をレシーバーが持っているケースでは、当初のスワップ期間終了時において市中金利スワップの固定金利を下回る水準にある場合に、レシーバーはエクステンダブルスワップの延長権を行使して、スワップ延長後は市中金利より高い固定金利を受け取るメリットを享受できることとなります。一方、「キャンセラブルスワップ」は、スワップの期間中にそれ以降のスワップを取りやめる権利を取引当事者の一方が持つスワップです。たとえば、スワップを取り止める権利をペイヤーが持っているケースでは、スワップ期間中に市中金利が低下した場合に、スワップを取り止める権利を行使して、当初のスワップによる高い固定金利の支払いを終了させることができます。

そして、これにより新たに低い市中金利をベースにしたスワップを組むことができます。これに対して、スワップを取り止める権利をレシーバーが持っているケースでは、スワップ期間中に市中金利が上昇した場合に、スワップを取り止める権利を行使して、当初のスワップによる低い固定金利の受取りを終了させることができます。そして、これにより新たに高い市中金利をベースにしたスワップを組むことができます。クレジットデリバティブは、信用リスク(クレジットリスク)を取引対象とするデリバティブです。すなわち、クレジットデリバティブは、原資産から信用リスクを切り離して信用リスク自体を取引対象にした商品です。

この場合の原資産には、貸出債権、個別債券、債券ポートフォリオ、信用状などのほか、信用リスクに関わる各種の指数も考えられます。そして、クレジットデリバティブ取引により、貸出債権や社債等が持つ信用リスクと信用リスク引受料(プレミアム)とが交換されることとなります。この結果、たとえば債権者は債務者の信用力低下に伴い発生する損失リスクを取引の相手方に移転することができます。信用リスクを売買する伝統的な商品としては、貸出債権を相対で売買する取引がありました。特にわが国では、バブル崩壊後の景気低迷時に金融機関が不良債権をオフバランス化する(バランスシートから外す)手法として貸出債権を束にしたものを大幅なディスカウントで売却するバルクセール(一括売却)が行われました。

こうした取引では、いくらディスカウントされたといっても投資家はディスカウントされた貸出債権の金額を対価として支払う必要があります。しかし、クレジットデリバティブを活用することによって投資家はわずかな元手資金を用意するだけで貸出債権を購入すると同じ効果を得ることができます。これは、少額資金で大きなエキスポージヤーを持つことができるデリバティブ取引のレバレッジ効果から来るものです。一方、信用リスクの移転を目的とする伝統的な商品には債務保証があります。この債務保証では、たとえば銀行が貸出債権を満期まで保有することを前提として付保されるものですが、クレジットデリバティブでは、当初から満期まで債権の保有を前提とすることなく貸付を行うとか、リスクのみを取り出して取引することができることから、より機動的なリスク管理が可能となります。