東証理事長のポスト

マーケットが栄えるかどうかは、売買される「もの」と売買する「人の質」と「金」が集まるかどうかで決まる。株式市場だと、「もの」とは、しっかりした会社(銘柄)ということになる。売買する「人」には二つの側面が期待されている。ちゃんとした証券会社(売り手)と上場企業の経営トップが揃わなければダメだ。「金」に色はついていないが、ダティーマネーのマネーロンダリングだけは御免である。

東証への海外企業の上場社数は、ここ二十年、減少の一途をたどっている。九一年末に百二十七社あった東証外国部の上場企業数は二〇〇〇年春時点て四十三社になった。その後、さらに減っている。山口光秀理事長の後任人事も迷走を重ねたあげく、上田正顕に決まった。大蔵省の元銀行局長で、国税庁長官を歴任したが、事務次官にはなっていない。土田は住宅金融専門会社住専)を不良債権のゴミ箱にする発端となった不動産向け融資の総量を規制する通達に深く関わっている。この問題では土田と森本修・農林中金特別顧問と故磯田一郎住友銀行会長、故竹下登首相が超A級戦犯との見方が定着している。

東証理事長のポストは「大蔵省の次官経験者の中でも大物次官の指定席」とまでいわれてきた。「東証は株式会社への移行など難しい問題を抱えている。何か起こるかわからない時期に、大物の次官経験者は出世ない」(大蔵省の元首脳)というのが本音なのか。はたまた、東証理事長の椅子は大物が座るには、もはや、それだけの魅力がなくなったということなのだろうか。

ナスダックージャパンは米ナスダックのコピーである。日本の新興企業が市場で直接資金を調達できることは確かだが、米ナスダックに上場している株式の取引が日本でできることの方が重要だ。ナスダックで国際戦略部門を担当するナスダックーインターナショナル社のジョンーウォール社長は「二〇〇一年夏にも、マイクロソフト、ヤフー、シスコーシステムズなど米国を代表するIT関連銘柄を含む十八社がナスダックージャパンに上場する」と語った。世界最大の半導体製造装置メーカーのアプライドーマテリアルズ社がナスダックージャパン上場の一番乗りを目指している、との報道もあった。

ナスダックージャパンのプロモーターは孫正義である。ソフトバンクグループの息のかかったネット企業が数多く上場することに目くじらを立ててはいけないのかもしれない。とはいっても、ソフトバンク光通信が投資した会社ばかりが公開しても面白味に欠けることは確かだ。孫は孫のルールで強引にやるだろう。

一方、米ナスダック側は日本の個人の金融資産、千三百十六兆円(九九年三月末)を取り込もうと狙っている。「日本の新興企業の公開は孫に任せておけ」という態度だ。金融当局も、証券会社も、投資家も日米のプロモーターに全幅の信頼をおけないのがナスダックージャパンの悲劇だ。