日米の新興市場の違い

一九九九年の米国では、株式の新規公開により、毎月ト人以上の一億ドル長者(百億円の富豪)が誕生したという。ハイテク産業のメッカ、シリコンバレーでは、ストックーオプション(企業が特定の価格で、ある限定された期間内に、株式を買い戻すことができる権利。高い株価をつけた時点で企業に買い戻してもらえれば役員や幹部社員は多額の現金を手に入れることができる)によって毎日、六十四人のミリす不アー(百万ドル長者)が誕生しているという、うれしくなるような話もある。

米国もネットバブルだったのか。表面上、そう見えないこともないが、米国では長い時間と手順を経て、ベンチャー企業をナスダック(米店頭公開市場)に公開させてきたという歴史かおる。起業家がその地域に住む、技術のことも分かるコンサルタントに事業計画書を持ち込む。計画を持ち込まれたコンサルタントが地縁、血縁でっながっている地元のエンゼル(出資者)に紹介し、出資をあおぐ

事業が立ち上がり、計画通り進んでいると地域のコンサルタントが評価し、業績を確認すると、そのコンサルタントは初めてそのベンチャー企業をナスダ。クに公開する準備を始める。エンゼルとは金主のことだ。もともとはブロードウェイの興行のスポンサーを指す。ショービジネスの世界の言葉が、いつしか経済界で使われるようになったのだ。ナスダックに上場されると全米の投資家がオープンにされた資料(決算、事業計画、資金調達予定表)などを精査し、成功すると思われる事業に投資する。ナスダックに上場しても、株式の売買(出来高という)が少なかったり、事業が不振に陥ったりすると、ただちに上場廃止となる。こうして年間、一千社が消えていく運命だ。

ところが日本のマーケットは、既存の株式市場も新興市場も淘汰の歴史がない。事業リスク(危険度)に関する説明も不十分だ。雪印乳業三菱自動車工業ブリヂストンタイヤといった超がっく優良企業の経営者でさえアカウンタビリティ(説明責任)を果たしていない。ハイテクベンチャーの場合は経営者の説明責任という考え方がもっと希薄だ。こうした基本的な問題を日本の経済ジャーナリズムはほとんど指摘しない。ネットバブルの責任の一端は、常に企業の側に立って記事を書く経済ジャーナリズムの側にもある。

ネットダブルを先導したマスコミやアナリストの罪について考えてみよう。「『日本経済新聞』の報道のスタンスは際立ってはっきりしている。インターネ。ト関連ビジネスにだって光と影の部分があるのに、光の面だけを大きく取り上げる。これが一部の経営者の『発表経営』を助長したといっていいのではないか」と財閥系の大手企業の会長は鋭く指摘する。「発表経営」とは、株価を上昇させるような好材料を意図的に小出しにして、特定の情報媒体(例えば目経新聞)に流すことをいう。ソフトバンク孫正義も「発表経営」の信奉者だ。