「B&Bの会」

こうした錬金術に心を奪われたベンチャー起業家が、石原のネットワークに参加するようになるのに、さほど時間は必要としなかった。ベンチャー起業家には昔から株大好き人間が多かった。彼らが集まる有名な会に、故・新井将敬代議士を囲む異業種交流会「B&Bの会」があった。「光通信の重田康光、シートゥーネットワークの稲井円安史、デジキューブ会長の鈴木尚などが集まっていた。『秘密投資クラブ』の疑いをもたれたこともあったようだ」(株好きのベンチャー起業家)

九八年二月、日興証券の利益供与疑惑が持ち上がり、新井将敬代議士が自殺してからは「B&Bの会」の主力メンバーが集まって、「エスケー総合研究所」を結成した。「エイチーアイーエス社長の渾田秀雄、プラザクリエイト社長ら若手経営者が新たに参加して再出発した」(同)「亡くなられた新井将敬代議士との関係を取沙汰された時に重田さんは『迷惑している』と社員に言ったそうです。彼は『B&Bの会』に参加していたという事実を隠さなければならない、何かの事情があったのかもしれないが、この話を伝え聞いた同会のメンバー達は、『エッ』という顔をしたといいます。ベンチャー企業の創業者が資金を出し合って、お互いの株を、もしも買っているとするなら、それはまさに。花見酒経済そのものです」。外資系の証券アナリストは、厳しい視線を株好きのベンチャー経営者に向ける。

彼等ベンテャー起業家たちは、KOBE証券の市村、COEグループの石原の許になだれをうつようにして駆け込んだ。石原のインターネットの画面にコーナーを持った企業の株価は必ず上昇した。それはマジックといっていいほどだったという。そして、突然、このコーナーが消滅した。これも一種のマジックなのであろうか。

ベンチャー起業家たちは、自分の会社の株価が上がっても保有株の含みが膨らむだけで、実際に動かせる資金が増えるわけではない。彼等はそれほど潤沢に、実際に動かせる金(現ナマ)を持っているわけではない。直接であるか間接であるかは問わないが、投資資金を出してくれるスポンサー(金主)が必要になる。

「COEグループの石原と関係が深い、消費者金融界のドンが、ベンチャー起業家の株式投機資金の真のスポンサーではないかといわれている。東京地検の『株価操作』疑惑追及の最終ターゲットの一つがここではないかとされている」(人下証券会社の最高百脳)折りも折り、二〇〇〇年三月中旬からのネット株の暴落の最終局面で、マスコミによく登場する若手経営者が消費者金融のドンのところに駆け込み、「一千億円出して下さい。株価の維持にご協力いただければ、あなたのために何でもしますと土下座して頼んだ」という見てきたような話が、静かに、しかし広範に広がっていった。この径営者は噂を親しい仲間の前で全面否定しかことはいうまでちない。